○ 特許権
特許権は特許法に基づいて、特許をうけている発明(自然法則を利用した技術的思想のうち高度なもの)を一定期間、独占的、排他的に利用することができる権利です。この特許権は、工業所有権の典型といわれます。工業所有権とは、特定の法律(特許法、実用新案法、意匠法及び商標法)に基づき技術的思想の創作、デザイン、商標について、一定の財産権を付与され、かつ、保護される者が、その財産権を、業として独占的に実施することのできる権利です。
特許権等の工業所有権は、自己創設、他社からの取引、その利用権の取得等があり、これに伴う取引には様々なものがあります。
なお、特許実施権も含めてその科目を特許権等として表示することも少なくありません。
○ 特許権を他から取得した場合
特許権を取得する形態としては、他から取得する場合と自ら創設する場合があります。
他から取得した場合の特許権の取得金額は次のとおりです。
取得価格=購入代価+附随費用
なお、自己の行った試験研究に基づく特許権と異なり、出願料、特許料その他の登録のために要する費用の額は、必ず取得金額に算入しなければならないので注意が必要です。
特許出願権、専用実施権、通常実施権を取得した場合の処理も以上と同様です(通常実施権に係る頭金は、ノウハウに準じ、税務上の繰延資産に該当します)。
なお、特許権の出願権を取得し、その後何年間か要して特許権の登録が認められたような場合、特許権の登録前の各年次においては、特許権の耐用年数により償却し、登録があった時点で、その出願権の未償却残高を特許権の取得価額とする取扱いになっています。
① 試験研究費を繰延資産として処理しているとき
取得金額=特許権を取得したときにおいて繰延資産+付随費用
として計上されている試験研究費の額
② 試験研究費を経費として処理しているとき
取得金額=付随費用
なお、上記①、②いずれの場合でも、出願料、特許料、その他登録に要する費用の額は、取得金額に算入しないことができるものとされています。
会社の研究費は、一つの新製品又は一つの新技術の開発のために行われているものではないことが一般的です。このような場合、振り替えるべき未償却残高は、概ね次のように処理します。
<あらかじめ研究の対象となる新製品・新技術が区分できる場合>
その対象となる個々の新製品等に区分して試験研究費を処理し、特許権の取得に際しては、その区分された試験研究費の未償却残高を振り替えます。
<対象となる新製品・新技術の区分ができない場合>
個々の新製品等の特許権が取得されたつど、試験研究費の未償却残高のうち、合理的な金額を見積もって振り替えます。
以上の処理は、結局、試験研究費からの振り替えが最大の問題となり、その対応関係について十分な立証資料を整理することがポイントとなります。
○ 特許権の償却
特許権等の無形固定資産の償却は、有形固定資産と異なり、直接法で行われます(営業権も同じ)。
特許権の法定存続期間は15年(ただし、特許権出願の日から20年を超えることはできない)ですが、税務上の耐用年数はこれより短く8年です。また、償却の開始日についても、その取得の日から事業の用に供したものとして、償却を開始するものとなっています。
特許権の専用実施権(の頭金)については、ノウハウに準じ5年(有効期間がそれより短い場合は有効期間)の耐用年数によって償却することが適切になっています。